「明日風編」突入の第11話~第13話放送記念!
西野 明日風 役 安済知佳さんインタビュー
- ついに明日風編が放送となりました。ここまでの明日風をどのように捉えて表現されていましたか? 雰囲気も纏っていますよね。
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そうなんです。朔のイマジナリーフレンド……?というような印象でしたね。ちょっと得体の知れない感じがあって、その儚さやミステリアスさが風のようで面白い子だなと思いました。話す言葉が文学少女ならでは、この作品ならではの言い回しで、すごく詩的で。しかも朔も同じように言葉を返すので、すごくポエミーな会話の応酬になるんですけど、それが二人にとって特別な時間になっている。最初はひとつひとつのセリフの意味合いというか、何を伝えたいと思ってこう言っているのか?を伝わるようにしなくちゃって構えていたのですが、音響監督の納谷(僚介)さんから「歌うようにセリフを発して」とディレクションいただいて、なるほど!と。意味を固定するよりも、セリフに含まれる印象の強さを優先していきました。
- 原作や台本で明日風編を読まれたとき、どんな感想を持ちましたか?
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ここまでのストーリーでは、“たまに出てきて去っていく明日風さん”で、イベントでもふざけて「福井のスナフキン」とか勝手に言っていたんですけど(笑)、明日風編でフォーカスされて、今まで見られなかった部分が見えてきて。神格化というほどじゃないですけど、これまでちょっと美化されていた明日風像がいい塩梅で崩れていくんですよね。年相応の……いや、下手したらちょっと子供っぽいくらいの無邪気な子なんだっていう一面が見えてくるのが、すごく面白くて。本に書かれていることは知っている人だと思うのだけど、世間に放り込まれたときの知識がなくて、すごく無垢なんです。一気に愛おしさが増しました。
- 朔たちが明日風たち三年生のところにくる進路相談会での二人の表情も新鮮でした。
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同性の友だち同士でもあると思うんですけど、自分と一緒にいるとき以外の親しい人の姿を見るのって複雑ですよね。寂しさもあるし、こういう顔を自分は引き出せないんだって思っちゃったりする悔しさがあったり。あのときの二人もお互いそう思っていたんでしょうね……きっと。
- 新たな面を踏まえての明日風の魅力は、どんなところだと思いますか?
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無邪気なところかな。よくよく考えたら、「第1話から無邪気だったわ、この人。川に飛び込んでたわ!」と思いました(笑)。ギャップなんでしょうね。普段が明るい元気っ子じゃないからこそ、ドキッとさせられる。どこかロマンチストだし、まだまだ思春期なんだねっていう人間味を見れたときのギャップが魅力的です。
- 演じる上で気をつけられたことは?
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明日風編に入ってからも「歌うように」というディレクションは念頭においていたのですが、ちょっと軽やかに歌うイメージで演じていきました。ただ、この先のエピソードの話になっちゃうんですけど、明日風の行動にかなり驚く部分がありまして。明日風がどれだけ無垢なのか、その大きなギャップについて、しっかり意識し直して芝居していきました。
- 第12話の川で朔と言い合うシーンはいかがでしたか?
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ここまでで一番感情が大きく出たところでした。彼女の心の芯に、指先がちょっと触れた感覚のあるシーンだと思うのですが、演じてきた身としても、ずっと抱えてきたものでもあったので、出そうと思って出したというより、自然に引きずり出された感覚でした。基本坂田(将吾)くんとのアフレコだったので、すごく原作を読み解いている坂田くんの話を聞きながら、「すごい話だね」と語り合って取り組んで。「新しい明日風を見せなきゃ!」みたいな気負いもないままに、あのシーンへ連れていっていただきました。
- 絵としての演出もすごく細やかで。
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本当に! 明日風と朔は二人だけの会話が多いので、アフレコでも大切にしすぎちゃうところがありました。その結果、「どうしてもセリフが尺に入りません! でもこの言葉は削れません!」みたいになることがあって。「どうする?」となったときに、監督が「絵を合わせるので、絵なしで録りましょう!」と英断してくださったことがありました。実質プレスコみたいな工程になるので、そうしたシーンは、もうぴったり以上のぴったりさで、ものすごく感動しました。
- 特に印象に残っているセリフはありますか?
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第12話で自転車に二人乗りしているときの「東京に行くなら〜」という朔のセリフですね。「ここでしか見られないものをもっと見よう。ここでしかできない会話をして、ここでしか流せない涙を流そう。遠く離れても、心はいつだってこの場所に帰ってこられるように」という。私も福井から東京に出てきた人間なので、なんだか当時の自分が言ってもらえたように感じて、心に響きました。
- 福井から上京して活躍されてきた安済さんだからこそ顕せる心の揺れが、この作品の大切なエッセンスになっていると感じます。
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「私はこの町が大好きで、大嫌い」という明日風のセリフ、めちゃくちゃわかるんです。私も地元のこと、本当に大好きで、出たくなかった。ただ、私の夢が叶えられる場所が当時は東京にしかなくて、勉強できる場もなくて。なんで福井にはないの? 離れたくないのに?って憤りがあったんですよね。あと、今は違うと思うんですが、当時はこういう夢を語ったときに「そんなの叶うわけない」とか「東京行ってどうすんの?」みたいに言われることもあって。だから、明日風のこの言葉がすごくわかるなって思いましたし、先ほど紹介した朔のセリフを耳にしたときに、なんだかあの時の私の感情だとか、抱えていたものが成仏できたような感覚がありました。個人的な思い入れなのですが、すごく大切なシーンです。
- あらためて千歳朔という男の子にはどんな魅力を感じていますか?
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ズルいですよね。飄々としてて、上っ面だけの言葉を吐いてるのかと思いきや、ちゃんと優しさ、思慮深さがあって。視聴者目線だと彼が抱えている内側の傷も見えてくるので、応援したくなる人物だと思うんですけど、キャラクターとして対峙しているとなんだか、自分にはその傷を見せてもらえないんだなっていう寂しさもあって。だからみんな、追いかけたくなるんでしょうね。それでこんなにモテモテに……。しかも、そうやって向かってくる相手を拒否しないんですよね、朔って。それがまたズルい!
- 安済さん自身は福井での青春時代にどんな思い出がありますか?
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高校1年生の時に単身上京してしまったので、福井で過ごした青春時代というのが実はほとんどなくて。エイベックス・アーティストアカデミーを特待生で受かって、やっと夢の勉強ができる!っていう時期だったので、気持ちがそっちに向かっていましたね。最初は福井から通っていたんですが、交通費が高すぎて、家賃払えるじゃん!ってなって。福井の高校は月に一回、単位のために通っていたので、福井での青春というと、もう小中学生の頃になっちゃいますね。でも、そういえば私も、作中に出てくるお掘のまわりを歩きながら「将来声優になるとしたら、ここを離れないといけないのかなー」なんて、ぼんやり考えていたこともあったなって思い出はあります。
- ちなみに声優を目指すようになったきっかけはというと?
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実は福井ってアニメがあまり映らなくて。民放はふたつくらいしかなくて、家によって映る局も違ったりしていたと思います。だから深夜アニメという概念がない世界だったんですよね。当時は配信という文化もなかったですし。カートゥーンネットワークで海外アニメばっかり見ていました。そのなかで、私は地元で合唱団に入っていたんですけど、年に一回ある定期コンサートで、ミュージカルをやる機会があって。パートごとのオーディションもあったので、そこで初めてソロの役をつかんだときに、すごくうれしくて。合唱団の先生も、感情を大事にする先生で、この歌詞ってどういう感情だと思う?みたいなことを教えてくれる方だったので、「演じるのって楽しいな」と思ったんです。ただ、女優さんになりたいわけじゃないし、ミュージカルというのもなんか違うな……と思っていたら、ある日、ある二つのアニメを観て、あれ、なんかあのキャラクターとこのキャラクター、声が似てる……?っていうことに気がついて。親に聞いたら「声優さんが一緒なんじゃない?」と言われたんです。そこで初めて“声優”という存在を意識しました。声優さんというのは見た目も性別も、それこそ人間じゃなくても関係なく表現していける役者さんなんだということがわかって、すごい!やってみたい!と思ったのがはじまりでした。
- 先行上映会やチラムネFESなど、地元でイベントに参加されていかがでしたか?
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先行上映会のときは、えっ、福井で先行上映って可能なの!?っていうところにまずびっくりしました(笑)。でも、坂田くんと羊宮(妃那)ちゃんと一緒に登壇して、二人とも本当に福井に来てくれたんだ〜!っていう喜びが大きかったですし、お客さまも、福井の方はもちろん、県外からも駆けつけてくださって、すごくうれしかった思い出です。先日のチラムネFESは、その最たるもので、キャストのみんなも、監督も、スタッフのみなさんも勢揃いしていて……めちゃくちゃ不思議な感覚でした。仕事仲間と福井にいるのが、なんだか面白くて。もう人生の半分以上東京にいるのに、みんなに「いいところだね」って言われるのがうれしくて、自分の中に福井のDNAがあるのを感じました。
- 地元の先輩として、明日風に声をかけるとしたらどんな言葉をかけますか?
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私の時代よりは確実に情報も多くて、昔よりは夢を追いやすい環境だとは思うんですけど、それでもやっぱり福井にいるときの空気感は、井の中の蛙じゃないですけど、まだ世界を知らない状態で、とても居心地がいいと思うんです。ずっとここで生きていきたいなって思えるような場所だからこそ、そこから出ていくのにはエネルギーがいる。それでも「行きたい」って思える何かがあるなら、飛び出してみても絶対損はないよっていうことは伝えたいです。明日風が夢見る職業も、私の職業もそうですが、福井で生まれ育ったからこその感性を使えるお仕事だと思うので、そこは自分の武器だと思って突き進んでほしい。でも……うーん、明日風は世間知らずすぎて、先輩としてはちょっと心配も大きいかな(笑)。
- 最後に今後の展開を楽しみにしてくださっているファンのみなさんへメッセージをお願いします。
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まずは第13話までご覧いただいて、ありがとうございました! ここからまた新たな一歩を踏み出す明日風が描かれていくのですが、行動力のすごさというか、怖いもの知らずさが発揮されますので、本当に楽しみにしていただきたいです。青春です。そして、明日風のお父さんとの向き合い方も大切な部分だと思うので、明日風の進路が、親子のすれ違いがどのような決着をするのかというところにも注目していただけたらと思います。引き続き、『チラムネ』をよろしくお願いいたします!